あけたらしろめインタビュー

『HELLO AGAIN』制作に関わった方々にインタビューしていく今回の企画。第三弾は、アートワークを手がけた あけたらしろめさん にお話をお聞きしました。

自己紹介

尾苗

自己紹介をお願いします。

あけたらしろめ

前作に引き続きアートワークを担当させて頂きました、あけたらしろめです。 2015年末にあけたらしろめの活動を区切り、その後「ORIS」という名前でコンセプトアルバム制作に参加したり、ロマンス祭りのときも草野義朗と名乗っていましたが、HELLO AGAINのリリースと同時期にあけたらしろめという名前を再び使うことにしました。

どういう経緯でまた「あけたらしろめ」という名前を使うことになったんですか?

あけたらしろめ

あけたらしろめの活動を区切った理由のひとつに、個人イラストレーターのあけたらしろめと、会社員でプロダクトデザイナーの草野をまとめたかったというのがあります。
それまで僕がイラスト活動してることは社内でも知られていましたが、イラストを仕事に使わせてもらえる機会は殆ど無かったんです。たまにあっても、シロとメロは使えなかったり。

もともと僕はイラストとデザインの仕事を分けて考えていなかったし、イラストのいいところを仕事にも活かしたかったんです。シロとメロは、未来のレコーダーをデザインする手がかりとして生まれたキャラクターだし、僕がオーディオをデザインする上で必要な存在なので、彼らをもっとプロダクトデザインの仕事のそばに居られるようにしたかった。

あけたらしろめも、草野も、やろうとしていることは殆ど一緒なんですけど、会社には一応、肩書きとか建前とか、これはOKだけどこれはなんとなくダメなんじゃない?みたいな線引きがあって、それをすっきりさせたくて。

なので、あけたらしろめを区切って、一旦草野がシロとメロを引き受けて、会社的なオーケーゾーンまで連れて行こうと。ちょうどそのタイミングでロマンス祭りでした。


あけたらしろめ

ロマンス祭りの仕事では職場で堂々とシロとメロを描くことができました。しかもショールームイベントとしては異例の集客で大成功してしまって。草野の絵はいいぞと。それから、ニコニコ超会議とか、ニコ生用デバイスのパッケージにイラストを使ってもらえるようになって、ここまでくるともう会社的には、草野でも、あけたらしろめでもどちらでもよくなってきたみたいで。
当初、こういう状態になるまで3年くらいはかかると覚悟していたので、機会に恵まれたというか、それで目的は達成されたので、あけたらしろめでまた頑張れるわけです。POLTAのお二人とロマンス祭りに来てくださった皆様に、本当に感謝しています。

じゃあ、案外僕たちがさせていただいたこと、良い方向に行ったんですね。

あけたらしろめ

はい、すっごく!
あけたらしろめを区切った理由は他にもいろいろあったのですが、その後再始動したきっかけもなんだかいろいろあって、その中でもやはりPOLTAさんの存在は大きいです。ありがとうございます。

今回のデザインについての感想

あけたらしろめ

かなり面白いものが出来たのではないかと思います。前作SAD COMMUNICATIONではシロやメロを使って制作させて頂くことに一種の申し訳無さや自信の無さがあって、ストレートに「これはシロとメロです!」みたいな絵は少なかったのですが、今作に至る間に、自分にはシロとメロしかないと悟ったり、POLTAのお二人からも思い切りやるように背中を押していただいたので、やりたいことをやりたい放題やらせて頂きました。SAD COMMUNICATIONのときは、新しくキャラクターを作るのが筋なんじゃないかと思ってて、傑さんや尾苗さんぽい高校生を描いたりもしたんですけど、今回は迷う時間もなくて(笑)そうするしかなかったのもあります。

尾苗

シロとメロについて、気になってる方、多いと思います。

あけたらしろめ

シロとメロっていうキャラクターは、彼らの世界に住んでいて、ひとつの時間軸上に存在しています。たとえば2015年末の展示[knit:]ではシロとメロが赤ちゃんの頃が描かれていたり、青春のエピソードは12歳、金星の涙は20歳くらいでした。

実は2016年以降、僕の作品の中からメロがいない状態になっているんです。たまに描いてはいるんですけど。というのは、金星の涙の最後にメロがライブハウスで歌うシーンがあるんですけど、歌ってるときに、「あーもう20歳だし一人暮らししよう…」と思って、その晩にシロにそう伝えて家を出ます。それでシロも団地に残る意味が無いので友達のホルを探す旅に出ます。そんな感じでシロとメロの物語は二手に分かれて、いま僕自身はシロと一緒に行動してて、それぞれに関わる作品を少しずつ描いてるんですけど、

参考リンク:星のラジオ
リンク

メロに関することはほとんど知らない。メロとは時々電話するんですけどそれくらいなんです。みたいな設定でやっていて。数年後、シロとメロが再び一緒に暮らし始めるまで、これを続けよう〜と思っていた矢先にHELLO AGAINの依頼を頂きました。

HELLO AGAINのアートワークにはシロやメロが描かれていますが、さっき話した世界や時間軸とは切り離された、別次元の世界で、役者として登場してもらっているという設定です。手塚治虫先生のスターシステムのような。さらに、内表紙には僕が3年間で描いたシロとメロの絵を沢山引用しました。こうすることでシロとメロの絵を知っている人はより楽しめる、引用元の絵を見た時の記憶とハローアゲインするわけです。 こういう実験的な、ただシロとメロを描き続けてるだけじゃ出なかったであろうアイデアが実現できたことはおおきな収穫でした。

なぜ引き受けてくださったのか?

今回急にリリースが決まったこともあり時間が無い上に、実はうまく納期の連絡がとれてなかったんですよね…。そうとう「しまった!」って思ったんですけど。

あけたらしろめ

はい、僕もです。(笑)

尾苗

非常にタイトなスケジュールで無茶なお願いだったんですけど、どうしてまた引き受けてくださったんですか?

あけたらしろめ

納期は長くても短くても、実際絵に向かっている時間って変わらないので、あまり抵抗はありませんでした。むしろ、収録楽曲を聴かせて頂いた時のインパクトと、POLTAのお二人との打ち合わせから、なにか吹っ切れたような潔さを感じて、アートワークも短時間でワーっと作ったほうが、切れ味の鋭いものが出来る気がしました。

というか、POLTAさんに起用して頂けること自体、滅茶苦茶感謝しているので断る理由もないのです。POLTAのお二人はいつも丸投げしてくださるので、やりたいことを100パーの力で具現化できます、そういう機会は滅多にないし、本当に有難いことなので、気合いを入れて即OKさせて頂きました。

尾苗

実際ほぼ二日間であの絵描いてくださいましたよね。POLTAもその場にお邪魔してカレー作ったり今回も合宿させていただきました。

あけたらしろめ

カレーを作りながらキャスをしてくださったり、カレーもとても美味しくて、泊まり込みで歌詞を描いてくださったり、終盤はもう、なんか横で応援してくださったり、すみませんでした(笑)。 お陰様でとても楽しく制作に取り組むことができました。本当に有難うございました。

今回は結構「引用」がキーワードになってるんですよね。

あけたらしろめ

はい。HELLO AGAINのアートワークには、500年前に活躍したオランダのヒエロニムス・ボスという画家の「悦楽の園」という絵を引用しています。

参考リンク:ムッシューPの美の研究
http://t-jikkosan.jugem.jp/?eid=58


(出典:ムッシューPの美の研究)

あけたらしろめ

この絵がスペイン・プラド美術館に収蔵されていて、ちょうど依頼を頂く前に実物を見たんです。作品は観音開きになっていて、閉じるとモノクロの天地創造図が描かれています。
ストーリーとしては、
1.天地創造図(3日目)
2.エデンの園
3.悦楽の園
4.地獄
という流れで、聖書に沿ったかたちになっています。絵には様々な地獄や、堕落した人間の姿が描かれていて、これについては検索すると専門家による様々な解釈を読むことができるんですけど。HELLO AGAINのデザインはこれを引用して、天国と地獄をひっくり返すかたちで構成しました。

絵の構図も悦楽の園を引用して組み立てているので、ボスの絵とHELLO AGAINを並べて見ると、いろんなことが読めてくるような仕掛けになっています。

東京オリンピックのエンブレム問題で、創造における「引用」の意味について大いに考えさせられました。僕の意見としては、引用は創作の重要な一要素であって安易に排除するべきではありません。問題はそれで何を言うかです。僕が言っても説得力ないかもしれませんが、引用によって500年前の作品と現代が繋がるって、不思議な感じでしょう、音楽にも、同じことが言えますよね。
HELLO AGAINのアートワークは、そういうことを考えながら制作しました。

ロマンスからのメロの変化

尾苗

ロマンスのMVからメロちゃんに登場してもらっています。

あけたらしろめ

メロは僕にとって絵を描くことそのものみたいな大きな存在で、それでいて未熟で未完成で、2012年から2015年の間、メロのことばっかりを考えてきました。でもそろそろ子離れの時期かなと思って、少し距離をおいて、メロというキャラクターをもっと客観的に見ていると、ロマンスの時って凄く人懐っこくて、繊細で、やさしいキャラクターだったと思いますが、最近は自分の歌を歌って生活するためにがんばってて、自分の世界を持つようになって、考え込んだり怒ったりもするようになっています。なんかいっつも考えごとしてますね。

最近、ときどきロマンスのMVを見返していますが、あの時のメロはかわいいけど、今同じように描こうとしてもうまく描けないんです。理由は分からないですけど、POLTAさんやみなさんのお陰で成長しているんだと思います。そうやって変化していくキャラクターを、これからも見守って頂けたら嬉しいです。

こだわったポイント

尾苗

今回、こだわってくださったポイントは?

あけたらしろめ

キャラクターの表情です。地獄の絵だけど、グロテスクにはしたくなくて、かなり気を使って描きました。ヒエロニムス・ボスの原作は、拷問やレイプが描かれていて、しかも割とポップというか、コミカルに描かれているのが逆にゾッとするんです。そこは完全に書き換えてしまったり、ポーズや表情にアレンジを加えました。

シロとメロを裸で描いたことも今まで一度しか無かったのですが、服を着せるとそれも違ったので、絵のイメージを損なわない程度にデフォルメした裸を描きました。簡単に描いてるように見えますが、けっこう葛藤しました。

なるほど。

あけたらしろめ

これとかヒエロニムス・ボスの絵は鳥にレイプされそうになってる絵なんですが、 アルバムの方は、ここに剣持ってる人いるじゃないですか。奥にいる人は妊娠してて手前にいる人が 剣を持って守っているんです。そういういじりを結構入れてます。よく見ると痛々しくないようにしていて。もとのボスの絵と見比べて頂くと面白いと思います。

歌詞の終わりのところにSAD COMMUNICATIONのジャケが亡霊みたいに出てるのもいいですよね。

あけたらしろめ

聴き終わったあとに、1stが聴きたくなったらいいなって。

辛かったことは?

辛かったことはありますか?

あけたらしろめ

ないです。

制作中のエピソード

あけたらしろめ

Twitterでは入稿期限がギリギリだとかデザインは2日で作ったとか言ってしまいましたが、実は制作のGOがかかったのは入稿の一か月くらい前のことで、その時点でCD周りの構成も決まっていたしヒエロニムス・ボスをカヴァーすることも決まっていました。では1か月の間、何をしていたかと言うと、ちまちまとシロとメロの絵を描いてみたり、曲や歌詞をじっくり鑑賞したり、ヒエロニムス・ボスや地獄についてフムフムと調べたり、まあ要するに何もしていなかったわけですね。納期も確認せずに。そしたら尾苗さんから「提出は明後日までです!」と連絡を頂いて、金曜の会社帰りから月曜の朝までぶっ続けの制作になったと。自業自得の入稿地獄でした。楽しかったですけど、いい加減ですみません。そうやってあの絵は生まれました。

HELLO AGAIN を聴いての感想

HELLO AGAIN、聴いてどうでしたか?

あけたらしろめ

売れると思います!わかんないですけど、ミニアルバムっていうの勿体無いですよね、名盤ですよね。

尾苗

自分でも思ってるんですけどね(笑)

でた!(笑)

あけたらしろめ

なんというか今のPOLTAさんの「態度」みたいなものが音に出ていて、それがすごくいい形で表れているような気がします。 このアルバムに人生かけてんぞと言わんばかりの傑さんのベースと、普遍的な良さを感じさせる尾苗さんの曲と歌の心地よさと、いろいろ混ざり合ってすごくドキドキします。

いま思えばロマンスMVの依頼を頂いて、初めてPOLTAさんのライブに行った頃、尾苗さんが「音源はいいのにライブが良くないって言われてて…」みたいなことをMCで仰っていたんですけど、2年ですっかりライブの感じが変わりましたよね。3人のグルーヴ感が凄く気持ち良くて、ライブとても好きです。これからの新曲披露やレコ発などなど、とても楽しみにしてます。

これからのあけたらしろめとORIS

あけたらしろめ

いまこれといって言えることや大きな動きはないのですが、いままでよりもっとがんばる気持ちです。あけたらしろめ2015年でやめま〜すって言った時、お店に置いて頂いていたものが殆ど完売してしまって、
それだけ多くの人が大切なお金を出して、あけたらしろめの作品を所持しようとしてくださるなんて、全く予想していなかったことだし、膝をついて手を合わせて泣いてしまうくらい尊い事実だったので(ほんとに)、いつか将来何らかの形で人の役に立つようなことをかたちにして、その時にみんなが、あの時あけたらしろめの作品を買って良かったなって思ってもらえるように、絵を続けます。
ほんとにありがとうございます。

2016.8 都内某所

INTERVIEWEEあけたらしろめ